■カリキュラム&講師プロフィール■
◎レッスン内容について◎
「演技」とは、台詞を言うだけのものではありません。
自分とは別の人物として、その人生を「生きる」ものです。
そのためには、台詞をしゃべる以前の準備段階のトレーニングが必要です。
私たち人間が言葉(台詞)を持つ前の、原始人のコミュニケーションから、学び直さなければならないのです。
つまり、言葉(台詞)がなくても、自分の思いを伝えて、相手の心根を感じ取ることができなければなりません。
それができてはじめて、台詞(言葉)を使うことが可能なのです。
そのための、トレーニングとして〈演技以前の心身操法〉と〈演技デッサン〉を行います。
さらに、これらを強化するために、身体と声から、コミュニケーション力の向上をはかる、
〈ダンス〉〈ボイス〉〈リズムトレーニング〉を行います。
そして、俳優の個人レベルでの、基本のコミュニケーション力が身についてから、
”与えられた状況”や”魔法のもしも”という「スタニスラフスキー・システム」のレッスンを行います。
自分の周りの状況や立場が変化することにより、身体や心理が変化して、
コミュニケーションの仕方も変化することを実感してもらいます。
もっとも、コミュニケーションとは自分の感情を発露するだけのものではありません。
ある「目的」を持って、相手と「関わり」、その目的を「達成」しようとする、「身体性」を伴った「行動」なのです。
この「行動分析」を理解して、それを実際にできるように、〈シーンスタディ〉では実践してもらいます。
【演劇】を演劇たらしめる一番の要素は、【葛藤】です!
その「葛藤」を戯曲から的確に読み取る訓練を行うわけです。
ここで間違ってはいけないのは、「葛藤」とは単なる移ろいやすい感情ではないということです。
互いの「行動」のぶつかり合いから生まれてくる、はっきりとした「内的感覚」と言えます。
ここまでは、俳優は自分自身(素の自分)で、できなければなりません。
これから先は、レベルが上がって、自分ではなく「役」として行えるように、「人物造形」の訓練をします。
しかし、ここからが本当の「演技」の面白いところです!
自分とは別の人物を「生きる」という、一度すると、病みつきになる体験をしてもらいます。
そのために、外面からアプローチする〈アニマル・エクササイズ〉や〈イマジナリー・ボディ〉という手法を使います。
なぜなら、私たちは、内面を変えるよりも、外面を変える方が簡単だからです。外面を変えると、内面も影響を受けて、
役の人物の「行動パターン」「思考パターン」「感情パターン」を獲得することができるからです。
ここまでが、稽古場でのレッスンとなります。
コミュニケーションと人物造形だけならば、これで十分なのですが、俳優はこれらのことを、観客(他者)の前という、
「不自然」な環境でしなければなりません。
ここで、さらにハードルが上がります。
稽古場でできていたのに、観客(他者)の目が気になって、実力が発揮できなくなるのです。
レッスンでできていたことを、本来(劇世界では)、いないはずの観客に影響を受けずにするためには
どうしたらよいのでしょうか?
スタニスラフスキーは、「意識」から「無意識」へと言っています。
つまり、意識でしていた稽古場での演技を、無意識的に舞台で可能になるように昇華するということです。
そのために、スタニスラフスキーの弟子であるミハイル・チェーホフのメソードを使って、内的感覚を自覚して
再現することをしてもらいます。
その実践の場として、中間と期末の〈研究発表会〉を用意しています。
これらはよくあるような、チケットノルマを負担する公演ではなく、「研究」の「成果」を確認する場として位置付けています。
以上のカリキュラムを体験して頂くことで、世界のプロ俳優たちがマスターしている「スタニスラフスキー・システム」について
理解していただけると思います。
スタニスラフスキー・システムは、絵画でいう所の【デッサン】にあたります。
画家は展覧会ではデッサン画を展示することがないように、演劇でもデッサンが「作品」になることはありません。
バラエティに富んだ「作品づくり」ができて、あらゆるタイプの演出家にも対応できる、
俳優としての訓練だと考えて頂ければと思っています。
シアター・コミュニケーション・ラボ[TCL大阪]では、そんな俳優を目指しています!
◎レッスンと講師◎
〈演技以前の心身操法〉
ロシアで実践されている気功・霊感など東洋的ワークと、モスクワ芸術座の天才俳優といわれた
ミハイル・チェーホフのメソードで内的感覚を高めます。
▶担当/堀江 新二(ほりえしんじ )[TCL大阪所長]
大阪大学名誉教授
ロシア演劇の第一人者。スタニスラフスキー・システムの全貌を明らかにした『俳優の仕事』(全3巻)を
ロシア語からの全訳を出版。日本翻訳出版文化賞を受賞(2010年)。
『スタニスラフスキーとヨーガ』(未來社/訳著/2015年)。
モスクワ・国立シューキン演劇大学俳優科に特別学生として入学(2006~2010年)。
〈演技デッサン〉
スタニスラフスキー・システムから基本エクササイズを学びます。五感のレッスン、相手との交流、一貫した行動、
与えられた状況など、演技を体系的に理解します。
〈シーンスタディ〉
シェイクスピア、チェーホフ、テネシー・ウィリアムズなどの戯曲を使って、行動分析をして、
アクションを掘り下げる演技レッスンです。
▶担当/八木 延佳(やぎのぶよし) [TCL大阪教務主任]
ドラマティーチャー
国立文楽劇場、劇団四季、東宝戯曲研究会をへて、関西学院大学、大阪府立東住吉高校で演技の講師。
西洋の演技メソードを学びながら、日本人の身体性や感情表現にマッチした、
演技やコミュニケーションのトレーニング法を開発している。
〈ダンス&アニマル・エクササイズ〉
ストリート、社交ダンスの基礎を学び、柔軟な体と表現力を身につけます。
さらに、人物造形の手法として欧米で実践されている、アニマル・エクササイズで観察力を磨きます。
▶担当/高島 大知(たかしまたいち)
ダンサー、インストラクター
15歳でストリートダンスに出会い、ダンスの根底にあるものを知るために音楽、文化、歴史を学ぶ。
ダンスを駆使して幅広く舞台などで活躍。
JDSF PD プレミアムダンス セミファイナリスト
〈ボイス&リズムトレーニング〉
J-POPを歌いながらボイストレーニングをします。
そして、演技に必要なリズム感、音感、相手とのコンビネーションを学びます。
▶担当/別府 実沙紀(べっぷみさき)
シンガー
シンガー、ダンサー、アクトレス、MCとしてテーマパークショーなどで活躍。
エステーミュージカル『赤毛のアン』福岡公演、USJ・10周年記念ミュージカル、
横浜みなとみらいピカチュウ大量発生チュウ!など出演多数。
〈中間&期末研究発表会〉
中間(8月)と期末(3月)の「発表会」はチケットノルマのある公演ではなく、演技を「研究」した成果をお披露目するものです。
中間ではシーンの断片やレッスンの一部を発表します。
期末では戯曲の一部を演劇関係者の前で披露して合評会を行います。