■チェーホフ『かもめ』の舞台公演■
近代演劇を確立したモスクワ芸術座を創設したスタニスラフスキーを、劇作家として支えたのがアントン・チェーホフです。
彼の戯曲は、それまでとは違って、目の前で事件が起こらない、人物が本音を語らないなどまったく新しい劇作法でした。
そのため俳優・演出家のスタニスラフスキーは、サブテキスト・人物の存在感・与えられた状況・行動分析という、
今までと違った演技法を生み出す必要に迫られました。
それが、「スタニスラフスキー・システム」という《演技の文法》として結実したのです。
ロシアの劇場や演劇大学では、近代劇の記念碑的作品である『かもめ』を上演することで、演技の本質を追及することを
しています。
それぞれの『かもめ』を見比べてください。
モスクワ芸術座
2000年代の新しい舞台です。
主役のコースチャを、21世紀の若手ナンバーワンと言われている
エヴゲニー・ミローノフが演じています。
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マールイ劇場
トリゴーリンを芸術監督のソローミンが演じて、コースチャを
名優コルシュノフ、ソーリンをコルシュノフの実父でやはり名優の
コルシュノフが演じています。
アルカージナは、映画「モスクワは涙を信じない」(米国アカデミー賞受賞作)の
主演だったムラヴョーヴァ、マーシャを魅惑的なオフルーピナ、
そしてドールンを演じている名優ミハイロフが素晴らしいです。
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レンコム劇場
20歳前のニーナを40歳近い女優が演じています。
行動が正しく、自己感覚が役に合っていれば俳優の実年齢は
関係ないという見本です。
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マールイ・ドラマ劇場(MDT)
サンクト・ペテルブルグのこの劇場では、25歳のコースチャを
40歳過ぎの中年の俳優が演じてます。
同じく、行動が正しく、自己感覚が役に合っていれば
俳優の実年齢は関係ないという見本です。
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モスソヴェート劇場
これが一番オーソドックスな舞台ではないでしょうか。
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ユーゴザーパド劇場
若者に人気の劇団。キャパ200名の小劇場で舞台セットや小道具を
ほとんど使わずに、俳優の身体と照明だけで魅せます。
ニーナは看板女優カリーナ・ドゥイモント。
上は、戯曲のはじめ、ニーナの劇中劇のモノローグ。
下は、ラストで、落ちぶれたニーナがコースチャの前に姿を見せるシーン。